miyaziyuuki9の玩具箱

主に特撮の事とか

ウルトラマンの神秘性

ウルトラマン、それも最初の奴を見ていると時々ぶつかる物がある。

それは『神秘性』という奴だ。

所謂第一期ウルトラシリーズウルトラQウルトラセブン)辺りのシリーズのファンの間で時たまにウルトラマンの神秘性や如何に、みたいな議論が交わされる事がある。

人間を超越した力を持っているからか?

遠いウン300万光年の彼方から来た宇宙人だからか?

その『ヒーロー』としての精神性の気高さからか?

個人的に考え、その神秘性という奴を吟味してみた……無いかも知んない。




こんなことを言えば怒られるかも知れない。だがなぜ無いと思ってしまったのか……

初代ウルトラマン第一話『ウルトラ作戦第一号』において、ウルトラマンは一番最初に何をしたか。
ハヤタ隊員の乗る小型ビートルと玉突き事故を起こしあわや死なせてしまうという良く考えたら大惨事を起こしてしまっている。

……とんでもねぇ!

死なせてしまったハヤタ隊員に一応の詫びを入れ、自分の命をあげよう、という行為(生き物に例えたら足下に屍を晒すセミに人間の命を与えようという位の行為)をした事が超越的な存在としてのアピールになったのか、ここでウルトラマンはその善性を見せるのだが変身アイテムのベーターカプセルを与えられたハヤタ隊員の『これを使うとどうなる?』という疑問に対してこの返し

『ヘッヘッへ、シンパイスルコトハナイ』

台無しだ。

何かの契約をして、後ろめたい所を隠す悪徳プロモーターみたいだ。

いや、良く考えてみよう。
この時点で怪しさ満点の宇宙人がなぜ国民的ヒーローへの道を歩み始めたのか。
ウルトラマンはこの後ピンチに陥ったハヤタ隊員がベーターカプセルを使って変身する事で怪獣を倒し人類を守るスーパーヒーローとしてデビューするが、都合の良い所をかっさらうだけでヒーロー扱いでは、出てくる人間がバカみたいだ。

ウルトラマンはその後も怪獣、宇宙人を倒し完全無欠のスーパーヒーローとして活躍する……のだがその完全無欠の牙城は早くも崩れ去った。

それが現れたのは第7話位だったか、『バラージの青い石』という話での事だ。

中近東を荒らしていた怪獣アントラーと戦うウルトラマンだがスペシウム光線が全く通用せず、逆に磁力光線に攻められどんどん時間が限界へと向かっていきカラータイマーの点滅も早くなってしまう。
結局の所アントラーはバラージの町を守っていた青い石を科学特捜隊のムラマツキャップがそれを投げつけ倒す(この時のムラマツキャップの強肩ぶりはよくネタにされる。身長40メートルクラスの怪獣に投げつけているので)。そして何故か勝ち誇るウルトラマンだが、ウルトラマンアントラーを倒した訳では無い。

体を張って戦ってくれたのだからまぁ称賛の声を上げても誰も文句は無いだろう。だが問題はこの話の閉めだ。

舞台となったバラージの町は砂漠にその道標が埋もれてしまい、例え旅人がその町を見ても蜃気楼の中に浮かぶ幻の町としか捉えられないだろう、と寂しいオチが付く。今回ウルトラマンは怪獣を倒しきれず、そして老人ばかりとなってしまいやがては滅び行く町を救う事も出来ない。
このまま時点で完全無欠、万能といった所から生まれでる神秘性はもうほぼ否定されてしまっている。

これ以降、ウルトラマンの神秘性や万能性は他ならぬウルトラマンを作っているスタッフ達の映像、シナリオによってたまに炸裂するボディブローのようにぶちこまれ、否定されていく。だがその結果ウルトラマンはどんどん人気を上げていき、やがて物語の終演の頂点を極めたラストを迎えるのだがその話は次の機会に……